昭和30年代に誕生した我が国の民間警備サービス。もとは泥棒対策として始まったサービスも、社会の情勢や要望をとらえ、様々な形態へ進化しました。大規模国際行事や都市の再開発、リニア新幹線開業等が控えたこれからの10年。そしてさらにその先の時代へ。私たちは次の50年をどう捉え、どう行動すべきなのでしょうか。
昭和30年代に誕生した我が国の民間警備サービス=警備業は、東京オリンピック選手村警備でその存在を世に知らしめ、その後、治安情勢の悪化等を背景に成長を続けました。
最近では、一般家庭へのホームセキュリティの普及、コンビニや駅構内などへのATM設置、大規模イベントの雑踏事故対策の強化、テロ情勢の緊迫化に伴う警戒の強化などの背景から、民間警備サービスは人々の生活の安全を守る生活安全産業として定着してきました。
現在では、警察官の約2倍の55万人を超える警備員が、我が国の安全を守るため昼夜を問わず働いています。
人々の安全を脅かす「リスク」は実にさまざまです。
窃盗をはじめとする犯罪、大切な財産を灰にしてしまう火災、毎年多数の死傷者を出す交通事故は、警備業が警戒・防止の対象としてきたリスクの代表です。
しかし、世に存在するリスクはこれだけではありません。
大震災や豪雨災害などの自然災害、ストーカーやDVといった心身への危害、コンピュータウィルスやネットワークへの侵入といったサイバーリスク、心臓突然死や感染症などの傷病リスク、高齢化と独居世帯の増加に伴う生活への不安など、例を挙げればきりがないほどにリスクは存在し、それを軽減・解消して安全を確保するための手段も多種多様ではありますが、「生活安全産業」を謳う警備業が今現在対応できている安全対策は、実に狭い範囲でしかないのが実情なのです。
社会に潜む様々なリスクを踏まえ、レジリエンスの向上が盛んに謳われるこの令和の時代、警備業が我が国の安全対策のリーダーとなるには、現代の社会のニーズ&ウォンツを捉える高いアンテナと即応性、誰よりも高いリスク思考が必要ではないでしょうか。
セキュリティシアターという言葉をご存知でしょうか。
米国のセキュリティ専門家で作家のBruce Schneier氏が著書の中で用いた語句で、実際の効果はない見せかけの安全対策(セキュリティ)を指します。
事件事故の予防を主眼とする民間警備分野は、警備員の姿を見せることで犯罪を諦めさせる効果も持ちあわせてはいるものの、現代の犯罪の態様をかんがみれば、それだけでは不十分と言わざるを得ませんし、イベント会場入口などで行われる手荷物検査も、大量殺傷などを防止するには不十分な面が少なくありません。
リスクを解消するためには、そのリスクに見合った手法を都度勘案して実行しなければなりませんが、警備員の配置ひとつとっても、人数、スキル、オペレーションなどが適切でなければ、それはセキュリティシアターにしかなりません。
ただいるだけではない。コストではなく、実効性あるバリューとしてのセキュリティをお客様にご提案していくことが、セキュリティの専門職たる私どもの努めです。
AI が発達するとともに、様々な情報通信技術が普及する現在、セキュリティのニーズやその手法も日々変革を遂げており、私どももそれに対応しなければなりません。
IoTやICTの発達、スマートデバイスの普及、労働者人口の減少、働き方の変化、企業活動等の効率化とスピード化といった社会情勢を踏まえると、マンパワーで行う施設警備や交通誘導警備などはもちろんのこと、機械警備もその手法を変化させることが必要ですし、それらの業務に従事する社員の就業形態や処遇なども時代に見合ったものへと変化を遂げる必要があります。
また、大震災などを踏まえた各種レジリエンス向上策は、個々の建物で個別の対策を行うのではなく、エリア全体で連携してレジリエンスを向上する、「点」から「面」の対策へとシフトしつつあります。生活安全産業を謳う警備業は、従来型の「警備業務」だけでなく、施設や街の管理運営を踏まえた幅広い視点と手法を持ち、あらゆる不安・不便・不快を解消できる産業へと変化を遂げなければならなりません。
このような情勢を踏まえ、「事件事故を警戒し防止する」ことを範ちゅうとする日本型”警備”の視点にとどまらず、「あらゆる不安・不便・不快を解消する」という幅広いセキュリティ/リスクマネジメントの視点とスキルなどを有した者をTONETグループ1000人超の社員の中から集めて「名古屋次世代セキュリティープロジェクト」( NAGOYA NEXT GENERATION SECURITY PROJECT:NSP )を編成。 50年先を見据えたセキュリティのあり方や新たなサービスを考えています。
伝統とは、数々の革新のうえに成り立つものです。
都市構造の変化やグローバル化、新たな技術の登場、人々の生活に多大な影響を及ぼす新たなリスクの具現化などが目まぐるしく起きている現在、私どもはこれまで以上に大きな変化を遂げなければなりません。
また、どれだけ機器やサービスの形態が発達しようとも、それを取扱う「人」が育っていなければ、企業としての存続することは困難ですから、時代に見合った人材の育成に努める必要があります。
社員の採用の適正化に始まり、研修制度の充実、長く務めることができる職場環境と処遇の整備等のほか、次世代の幹部・経営層となる若手社員の専門的教育など、取り組むべき課題は少なくありませんが、社員とその家族が「この会社で良かった」と思えるような会社づくり、そして子どもたちに「将来はセキュリティのシゴトに就きたい」と言ってもらえるような産業を目指します。
創業当時から掲げる「安全を哲学し創造する」という理念が、現代社会では何を表すのか。私たちは何を創造すべきなのか。そのカタチはこれからどう変化するのか。
TONETグループは令和の時代、そしてその後の時代にふさわしい安全のカタチを哲学し、未来を創造していきます。